東京地方裁判所 昭和42年(ワ)12611号 判決
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〔判決理由〕
[編注・第三 請求の原因 三、(損害)
(一) 人損(略)]
(二) 物損
(1) 被害車の破損金三六万五、〇〇〇円
被害車が前記のとおり破損し使用不能になつたので被害車の時価相当額
(2) 被害車の保管費用金五万八、〇〇〇円
被害車を昭和四二年五月二一日から同年一二月末日まで訴外伊藤忠自動車株式会社および昭和四三年一月一日から同年六月末まで訴外鴨下商事株式会社にそれぞれ保管させた費用
(イ) 右伊藤忠自動車分 金六〇〇〇円
(ロ) 右鴨下商事分 金五万二〇〇〇円]
五 (損害)
(一) 人損<省略>
(二) 物損
(1) 被害車の修理費
本件事故により原告所有の被害車が破損したことについては当事者に争いがない。しかし、<証拠>によれば、被害車は修復が可能であつたので、被告須貝においてその指定工場である有限会社正和自動車に依頼し、金二一万七〇九〇円の費用をかけて修理し、昭和四二年四月ごろ原告宅に届けたが、原告において被害車の修理について後記の如き経緯があつたことから、右修理の安全性を伊藤忠自動車株式会社で調べたところ、リヤーサスペンション等の修理に不完全なところがあることが分かり、その補修・調整にはなお金五万五九三五円を要する見込みであることが認められる。証人渡辺の証言中、被害車は正和自動車において完全に修理した旨の部分および証人島田の証言中、被害車を原告宅に届ける途中後輪のブレは感じなかつた旨の部分は右認定事実に徴しにわかに措信できず、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。はたしてしからば原告の主張する被害車の破損による時価相当額の損害は認めることはできないが、右主張に黙示的に予備的主張として含まれている右補修費用は本件事故による損害というべきところ、前記の原告の過失を斟酌して原告の被告らに求めうる右損害はうち金四万五〇〇〇円をもつて相当とする。
(2) 被害車の保管費用
<証拠>によると、原告は本件事故直後被告須貝側の者と被害車の措置について話合い、被害車を修理するときは原告において行なう旨を申し入れていたが、被告須貝において原告の了解をとらないうちに被害車を修理し、その後同被告の従業員島田功と牧野二郎とがこれを原告宅に届けた際にも完全な引渡しがなされず、しかも前記の如く修理に瑕疵があつたので、かかる被害車を被告らとの折衝や本件訴訟の証拠とするため、昭和四二年五月一六日ごろから同年一二月一一日ごろまで二〇九日間伊藤忠自動車株式会社に、昭和四三年一月一日から同年六月末まで鴨下商事株式会社にそれぞれ保管させ、その費用として前者に一日金三〇円の割合による金六〇〇〇円(一〇〇〇円未満の端数切捨て)、後者に金五万二〇〇〇円を支払つたことが認められる。被告須貝の供述中、原告との交渉で被害車の修理は同被告の方ですることに決まつた旨の部分は伝聞であり、また原告本人の供述に照らし信用できないし、他に右認定を覆えすに足りる証拠はない。
ところで本訴においては被害車の修理の瑕疵は前記(二)(1)の書証・人証で十分立証できるのであるから、それを立証するために多額の費用を支出してまで被害車自体を保管しておく必要はなかつたと考えられるが、他方、被害車の修理と授受をめぐつて右にみたように完全な合意が成立しておらず、しかも前認定のようにその修理には、瑕疵があつたのであるから、この問題を話合いで解決しようとするためには折衝にあたつて右瑕疵自体を被告らに示す必要があるとした原告の考えも首肯できないものではなく、ただ原告が被告らとの話合いによる解決を断念して裁判所にその判断をゆだねることになつた昭和四二年一一月二二日―本訴の提起が同日であることは記録上明らかである―以後は被害車を保管しておく必要はなくなつたというべきである。そうとすれば、<証拠>により認められる一〇日から一五日位の被害車の補修期間を考慮しても原告主張の被害車の保管費用は右伊藤忠自動車株式会社の分を認めれば足り、鴨下商事株式会社の分は本件事故と相当因果関係がないものといわなければならない。そして前記原告の過失を斟酌すると、原告が被告らに賠償を求めうる保管費用は金四八〇〇円とすべきである。(倉田卓次 福永政彦 並木茂)